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暮しを楽しむの手帖
美食屋月#4 お客様に「美味しい」と喜んでほしいから…。八代の小さなごはん屋さんが掲げる大きな夢

熊本県八代市本町

今年(2025年)5月にオープンした熊本県八代市のごはん屋さん「美食屋月」。中心市街地のビルテナントで店開きをしてから2ヶ月ほどしか経っていませんが、近隣の飲食店で働く人たちもリピートするほどの人気店となっています。

「うちは深夜1時までやっているので、皆さん自分の店を閉めてから食事に来てくださるんですよ。あとはバーやスナックの女の子。『お店の雰囲気が良いから一人でも入りやすい』と言ってくれて。同業の方から評価していただけるのは本当にありがたいです」

オーナー・松永潤さんがスタッフと共に作り上げた“お洒落な空間で味わう管理栄養士の手づくり料理”を求めて八代市民が足しげく通う「美食屋月」。今回のインタビューでは、現在感じている手ごたえと今後の展望について伺っていきたいと思います。

家族やSNSで美味しい情報を仕入れる学生たち。思わぬテイクアウト需要にオーナーもビックリ

オープンから2ヶ月ほどが経ちました。今感じている手ごたえを教えてください。

松永さん:ありがたいことにすごく反響があって、学生や20代のカップルといった若者からご年配の方まで幅広くご来店いただいています。常連さんに多いのが近隣の病院に勤めるお医者様。舌が肥えている方ばかりなので調理を担当している店長はすごく緊張していたんですけど、2回、3回とリピートしてくださるようになると料理人として大きな自信になったようです。

12年ほど八代でスナックを経営した経験をお持ちの松永オーナー。どのようなところに違いを感じていらっしゃいますか?

松永さん:そうですね…。お酒を飲みながら会話やカラオケを楽しむ時間・空間を提供するスナックに比べると飲食店で利益を出すのは本当に大変。でも、食材にこだわって美味しさを追求するからこそ、お客様が何度も足を運んでくださっているんだと思います。もっと美味しいものを提供したい、お客様に喜んでほしい。この初心を忘れずにこれからも頑張っていきたいと思います。

これまでの中で印象的だった出来事があればお聞かせください。

松永さん:同じお客様が1日に3回もいらっしゃったこと。ランチを食べに来て、夕食を食べに来て。その後、「バーに行く」と退店なさったんですけど、数時間後に「〆に来た」って。3回目の時には拍手で「おかえりなさーい!」ってお迎えしましたね。そうそう、先日初めて満席が2回転したんですよ。その時はステージが一段階上がった感じがして、スタッフ一同すごく盛り上がりました。

右肩上がりで伸びているということで、手ごたえはガッチリ、ですね。

松永さん:意外な需要があったのが学生のテイクアウト。うちはほぼ全てのメニューを持ち帰りできるので、食事をされた方が家族へのお土産にハンバーガーやアサイーボウルをよく注文なさるんです。それを食べた中高生・大学生のお子さんが「また食べたい!」と足を運んでくださるようで…。中には「インスタで見ました~」と買いにくる子たちもいて、若者の好奇心はすごいなと感じています。

母子でチャレンジする大きな野望!? 玉子焼きのフランチャイズ展開&お弁当の配達販売

月ではかなり幅広いジャンルの料理を提供していらっしゃいます。そのほとんどのメニューをテイクアウト対応するのは負担が大きいような気がするのですが…。

松永さん:テイクアウト事業をやろうと考えた最大の理由は立地。この近隣にはスナックやバーが多いんですけど、そういうお店は近くにある飲食店のテイクアウトやデリバリーをよく活用するんですよ。実際、私が昔、経営していたスナックもそうでしたから。加えて、この通り沿いにはテイクアウト対応している飲食店がなかったので、絶対に需要があると考えたんです。

ご自身の経験からピンポイントでニーズを掴みに行った、と。

松永さん:おかげさまで、近くのスナックやバーで働くスタッフの方はもちろん、そのお店のお客様からのオーダーもコンスタントに入ってきています。定食、一品料理、ステーキ、ラーメン、味噌汁、おにぎり、ハンバーガーにスイーツ…。こぢんまりとした店舗からは想像ができないくらい多様なメニューをご用意しているので、すごく喜んでいただいているんですよ。

それでは最後に、今後の展望をお聞かせください。

松永さん:代表を務める息子ともども野望はおおきいんですよ。ひとつは看板メニューの「月の玉子焼き」を大量生産できる体制を整えて、新しい販売経路の拡大をしていくこと。例えば、冷凍商品にしてオンラインショップで全国に発送したり、熊本や福岡の商業施設で店頭販売したり…。屋号の焼き印も作って、八代発の玉子焼きブランドとしてフランチャイズ展開していくことが目標ですね。

なんと素敵な夢!

松永さん:もうひとつはお弁当の配達販売。徒歩圏内に市役所や大きい病院があって、職員・従業員の方から「お弁当はやらないんですか?」とよくご要望いただくんです。元々、お弁当はテイクアウトの一環としてやろうと考えていたので、今の状況が少し落ち着いたら店長と一緒にメニューを考案していこうかなと。決まったらInstagramで告知しますので、ぜひフォローしていただければ幸いです。

「屋号が“月”なので、“満月の日”みたいな企画もやりたいなと思っています。月に一度、満月の日はちょっとしたサービスをするとか、年に一度の十五夜の時は特別なイベントをするとか。最初は上手くいかなくたっていいんです。やってみないことには良いも悪いも分からないんですから」

松永さんが生まれ育った八代の地で、“他にはないごはん屋さん”として産声を上げた「美食屋月」。まだ始まったばかりの新参者だからこそ、身近なことからコツコツと取り組んで、お客様にもっと喜んでもらえる店にしていきたい、と先を見据えます。

オーナーの朗らかで洗練された人柄と“失敗は成功の母”を地で行くチャレンジ精神こそ、闇夜を照らす月明かり。その光に誘われるように歩みを進める「美食屋月」には、きっと順風満帆な未来が広がっていることでしょう。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
美食屋月

熊本県八代市本町1丁目7-12 梓会館サンクスビル1F ( Google MAP

営業時間:

昼11:30~14:00、夜18:00~26:00(不定休)

TEL: 0965-65-7007