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暮しを楽しむの手帖
ブラッスリーカズ#1 かしこまらずに本格的な洋食を。大村市のアーケード街でカジュアルレストランを営む日本一の女性シェフ

長崎県大村市本町

JR大村駅から国道34号方面へ延びる徒歩10分。夏越夢通りと長崎街道が交わるアーケード商店街の一角で営業しているのが洋食レストラン「ブラッスリーカズ」です。

「実家の隣にひと回りくらい年の離れた従姉が住んでいて。専業主婦だったんですけどすごく料理が得意だったので、小学生の頃からお菓子や料理を教えてもらっていたんです。それを家族に食べてもらった時に『美味しい』と喜んでくれたのが料理人を目指したきっかけですね」

懐かしむように教えてくれたのは人懐っこい笑顔が印象的なオーナーシェフの末永佳珠美さん。大村市内の向陽高校調理科2期生として卒業し、ホテルやイタリアンレストランに勤務したのち、2022年11月に「ブラッスリーカズ」をオープンしました。 今回の記事では、そんな末永さんの料理人人生を紐解いてみたいと思います。

コンテストや技能五輪で日本一に。大好きな料理への情熱を胸に注目のホープとして躍進

中学生の頃には料理人を志していたという末永さん。なぜ向陽高校の調理科を進学先に選んだのでしょうか。

末永さん:当時、長崎県内に調理科のある高校はなくて、私が中2の時に向陽高校が調理科を設立したんですよ。オープンスクールも先輩たちが楽しそうでしたし、なにより「卒業と同時に調理師免許が取れる」というのが大きかった。調理科は人気があって、私たちの代は36人もいましたね。

在学時代の思い出を教えてください。

末永さん:1年生で和食、2年生で洋食、3年生で中華・製菓・製パン・特別給食を学習。夏休み・秋休みには希望する飲食店での研修・実習に励みました。あとは、長期休暇の宿題で“自宅で作った料理のレポート”という宿題があったんですけど、作った料理を家族に振る舞ったらすごく好評で嬉しかったのを覚えています。

※Instagramより
卒業後は長崎市のホテルニュー長崎に勤務なさいます。

末永さん:ひとつは高校で洋食が一番楽しかったこと。もうひとつは謎に「年中無休の仕事がしたい!」と考えてホテルの料理人を目指しました。ちょうど私たちの1学年下からホテルニュー長崎の総料理長が講師として来てくださっていた縁もあって就職。在籍した6年間で料理人として様々なことを経験することができました。

ホテル勤務時代には全国から料理人が集うコンテストで日本一に輝いていらっしゃるんですよね。

末永さん:青年技能者の技能レベルを競う「第47回技能五輪全国大会西洋料理部門(2009)」、23歳未満の料理人が参加できる「第22回トック・ドール料理コンテスト(2011)」でそれぞれ優勝させていただきました。それはやっぱり知識や技術を叩き込んでくれた先輩や仲間のおかげ。コンテストに参加する時は終業後や休日にも準備したりと、かなり燃えていましたね。

※日本食糧新聞(2011.2.23)のWEB記事より

カジュアルに本格的な洋食を楽しんでいただきたい。シェフの技術と人柄で大村の人気レストランへ

末永さんが24歳の時、6年務めたホテルニュー長崎を退職。大村市内のイタリアンレストラン・ピッコロピアットの店長へと転身なさいます。

末永さん:ある日、高校時代の先生から電話がかかってきて。話を聞くと、ホテルを辞めたなら向陽高校で運営しているレストランの店長をしてくれないか、というオファーだったんです。当時の理事長が私がコンテストで優勝したりしていたのをご存じだったみたいで。飲食店で働く気はあまりなかったんですけど、熱心に話をしてくださったのでやってみることにしました。

ホテルの料理人から洋食レストランの店長へ。ガラリと環境が変わったわけですね。

末永さん:はい。特に店舗経営や接客は、ホテルで調理業務だけをしてきた私にとって大きな勉強になりました。働き始めたころはレジ締めも領収書の書き方もわからないくらいでしたから(笑)。売り上げを見て、会議に出て…。フランスの調理学校に1ヶ月ほど留学したこともあったかな。そういった経験を積んだからこそ、こうして独立できたと思っています。

独立を考えたきっかけはなんだったのでしょうか。

末永さん:私、休みの日でも料理教室に通うくらい料理が好き。だから、時間を気にせず働くのも苦ではなかったし、自分のやりたいようにさせてもらっていたので辞めるつもりはなかったんです。でも働き方改革やコロナ禍を経て、雇用されたままだとこれまでのような料理中心の生活ができないなと思うようになって。ホテルで働いていた妹も誘って、2022年にブラッスリーカズをオープンしました。

ブラッスリーカズのコンセプトを教えてください。

末永さん:カジュアルに本格的な洋食を楽しんでいただくお店。長崎の食材と季節に合わせた絶品の手作りメニューを提供しています。ランチでもディナーでも気軽に入っていただけるように、内装は黒と白を基調にしたシンプルなデザインに。料理で人に喜んでもらえるのがすごく好きなので、自分の店をオープンして良かったなと思いますね。

「高校生の頃は自分の店を持つとは思ってもみませんでした」と笑う末永さん。20年近く培った料理人としての技術と経験、誰とでもすぐに打ち解けるコミュ力を持ったオーナーシェフが切り盛りするブラッスリーカズはオープンから数か月で大村の人気店へと急成長しました。

「料理の魅力ですか?それはどれだけ研鑽しても終わりがないこと。料理の世界って新しいレシピや技術がどんどん出てくる。だから、勉強に終わりがないんです。どこまでいっても新しいことにチャレンジし続けられるのは楽しいものだなと思いますね」

次回は大村市に誕生したブラッスリーカズのこだわりや魅力について紹介します。お楽しみに!

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
Brasserie Kazu(ブラッスリーカズ)

長崎県大村市本町436-6 ( Google MAP

営業時間:

ランチ11:30~15:00、ディナー18:00~23:00(定休:水曜)

TEL: 0957-48-8855

URL:https://www.brasserie-kazu.com/