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長崎県雲仙市小浜町雲仙
玄関の自動扉を開けて中に入ると、ロビーの開放的で和モダンな雰囲気が印象的な雲仙温泉のホテル「青雲荘」。カウンターの片隅にはマスコットキャラクター・デン助のぬいぐるみが置かれ、今日も多くのお客様をお迎えしています。
「デン助のモデルは、かつて青雲荘の看板犬として愛されたデンとチビという兄弟犬。誰に教わるでもなく、お客様の道案内や見送りをしていたという彼らの『お客様を想う心』は、時代が変わった現代でも私たちスタッフに受け継がれています」
そう教えてくれたのは営業課主任の猶塚雄斗さん。最終回となる今回は、SNSを通じた地域の魅力発信や困難を乗り越えて挑む新たな取り組み、そしてこれからの青雲荘が目指す姿についてインタビューしていきます。

猶塚さん:「雲仙がどういう場所なのか」を知ってもらうこと、そして地元の方にも「雲仙でこんな楽しみ方ができるんだ」という再発見をしていただくことですね。いきなり青雲荘をアピールするのではなく、まずは雲仙という地域に興味を持っていただき、その入り口として当館を知っていただければという想いで運用しています。
猶塚さん:そうですね。自分で現地に赴いて撮影したものと、雲仙観光局から提供していただいたものを織り交ぜながら投稿しています。最近のお気に入りはリール動画としてアップした仁田峠のロープウェイからの景色。そのタイミングでしか見ることのできない雲仙の魅力を紹介できるよう、できるだけ足を運び、その時々のリアルな美しさを届けるよう心がけていますね。

猶塚さん:雲仙地獄は外せない観光スポットだと思うのですが、可能であればガイドさんの解説を聞きながら巡っていただきたいですね。歴史や成り立ちを理解した上で見る景色は、ひとつ違った深みがありますから。あとは昔から避暑地として親しまれてきた自然の涼しさ。麓と比べると5℃ほど違うので意識すると地形のおもしろさを体感していただけますよ。
猶塚さん:雲仙地獄の向かい側にある「旧八万地獄」です。かつて地獄だった場所で、現在も地熱の影響で冬でも地面が温かいんですよ。夜、そこに寝転んで眺める、遮るものが何もない満天の星空は雲仙ならではの体験だと思います。

猶塚さん:土砂災害の直後は「いつ再開できるか分からない」という状況で、正直落ち込むこともありました。そんな私たちの支えとなったのは再開を楽しみにしてくださるお客様たち。休館中に社内で議論を重ねる中で、「生まれ変わった青雲荘として、どのような新しい価値を提供できるか」ということを少しずつ前向きに考えるようになりました。
猶塚さん:雲仙は魅力的な温泉地ですが、お子様が室内で遊べる場所が少ない、という課題がありました。そこで、世界的に人気のフィギュアメーカー「シュライヒ」とコラボレーション。大迫力の恐竜フィギュアを館内に展示したほか、化石発掘体験やスタンプラリー、段ボール遊具のプレイランドなどを実施し、多くのファミリーに楽しんでいただきました。

猶塚さん:そうですね。恐竜ランドの期間中は日帰りのお客様は前年比で120%ほどに増え、子育て世代の方々に目的地として選んでいただけたという手ごたえは大きいですね。新たな客層の広がりを実感できたことはもちろんですが、なによりたくさんのお子様が喜ぶ姿を直接見ることができ、開催して本当によかったなと感じています。
猶塚さん:引き続き、私たちの宝である温泉を大切に守りながら、お客様にその価値を届けていきたいと考えています。そして、青雲荘への宿泊を目的とするだけでなく、雲仙温泉、ひいては島原半島全体に足を運んでいただけるようなプロモーションを展開することが大きな目標。私たちが魅力を発信することで地域全体が活性化していく、そんな未来を目指して歩み続けたいと思います。

美肌の湯と称される極上の温泉、地元の恵みを詰め込んだ料理、そして訪れる人を温かく包み込むスタッフのおもてなし…。そこには、老舗旅館としての誇りと新しい風を取り入れようとする挑戦の姿勢がありました。
「雲仙の良さを知ってもらいたい」
取材中、猶塚さんが繰り返したその言葉通り、青雲荘が目指すのは単なる宿泊施設にとどまらない、雲仙という地域の魅力を伝える窓口のような存在。自然の脅威と恩恵、その両方を深く深く感じた青雲荘の新たな物語はまだ始まったばかりです。
取材・執筆/Komori Daigo

長崎県雲仙市小浜町雲仙500-1 ( Google MAP )
TEL: 0957-73-3273