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長崎県諫早市多良見町化屋
1984年に長崎市の浦上天主堂近くの居酒屋として創業し、地域の人々や長崎大学に通う学生とともに40年の歴史を刻んできた「やきとり五つぼ」。店主の瀬戸口進さんは店舗の老朽化や自身の年齢を理由に移転を決意し、2024年11月に同店は惜しまれながらも諫早市で再スタートを切りました。
それから1年。すっかりと地域に溶け込んだ「やきとり五つぼ」には、リーズナブルで美味しい料理を求めて多くの人が足を運んでいます。
最終回となる本記事では「やきとり五つぼのこれから」をテーマに瀬戸口さんへインタビュー。人生の大半をやきとり職人としてささげてきた店主の思い描く展望を紐解いていきたいと思います。

瀬戸口さん:おかげさまでボチボチですね。喜々津駅の周辺にはマンションやビジネスホテルが多いので、地元の皆さんやビジネス・観光の方などさまざまなお客さんが来てくださっています。正直なところ、最初は隠れ家的にゆっくりやれればいいかなと思っていたんですけど、まあ、忙しく働けるのはありがたいことですね。
瀬戸口さん:40年間、長崎のアンジェラス通りで店を構えていたので、「街の風景の一部がなくなったような物寂しさがある」と感じている方が多いようです。当たり前にあった五つぼの提灯の光、夕方になると漂うやきとりの匂い…。かくいう私も、移転の日が近づくほど少し感傷的になっていました。でも、惜しんでもらえるほど地域に根付けたというのは、私にとっての大きな誇りですね。

瀬戸口さん:そうですね。前店舗の最寄り駅であるJR浦上駅からJR喜々津駅まで15分ほどなので、「今までよりも通いやすくなった」という方もいらっしゃいます。大体週に1~2回くらいは浦上から来てくださるお客さんがいらっしゃるかな。移転しても応援してくれる顔なじみがいるというのは、すごく心強いなと感じています。
瀬戸口さん:オープンに向けて店舗の改装をしている時に、たまたま通りかかった人から「もしかして長崎にある五つぼさんですか?」と声をかけていただいたこと。その方は昔、長崎の店舗に通ってくださっていたようで、玄関のロゴを見てピンときたそうです。「諫早に来てくれてありがとう」と仰ってくださって、長くやってきて良かったなとすごく感動しました。

瀬戸口さん:この店を1日でも長く続けること。それが一番の地域貢献だと思っています。この街で暮らす人にとって外食の選択肢が増えることはもちろん、基本的に地場の商店から食材やお酒は仕入れているので、地域の酒屋さんや肉屋さんなどさまざまなお店に還元することができる。だから、まずは健康第一で元気に営業を続けられればと思います。
瀬戸口さん:正直なところ、私は、五つぼを40年守ってきたというより、家族を養うために必死で働いていたら40年経っていたという感覚なんですよ。だから、移転後は余生の楽しみとして店をのんびりやれればいいと考えていました。でも、ある時、「これだけ長く続いたのだから、この店は未来にも必要とされる何かがあるんじゃないか」と思うようになったんです。

瀬戸口さん:はい、五つぼの味を継承していきたい、と考えています。そのために、事業継承のマッチング支援にも登録しました。「やってみたい」という人が現れれば、半世紀以上に渡る料理人人生で得た私の技術と経験を全て伝えていきたい。そうして五つぼの味や店舗をこの先も長く残していくのが、今の大きな夢ですね。
瀬戸口さん:30代半ばで「やきとり五つぼ」を開業して半世紀近くやってきました。喜々津でリニューアルして店舗も新しくなりましたし、期限は決めずに体が動く限り営業していきたいと考えています。できることなら生涯現役。なんとか年齢に抗いながら、1日でも長く美味しい料理を提供していきますので、ぜひ、気軽に足を運んでくださいね。

諫早への移転当初は「余生の楽しみとしてのんびりやれれば」と捉えていた瀬戸口さん。しかし、諫早での新たな出会いや長崎から通う常連客の想いにふれる中で、「事業継承」という大きな夢に向かって歩み出しています。
“卓袱料理人”として培った技術をベースに生み出した“五つぼの味”。それは瀬戸口さんにとって、人生を支えてくれた、代えの効かない大きな武器。それを次代へ継承したいと願う店主の眼には、静かな情熱の炎が燃え上がっているようでした。
取材・執筆/Komori Daigo

長崎県諫早市多良見町化屋474−6 ( Google MAP )
営業時間:
17時30分~22時00分(定休日:水・木)
TEL: 090-8766-0510