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長崎県雲仙市吾妻町阿母名
2024年、雲仙市吾妻町に誕生したフリースペースムーミンティラ。リーズナブルな料金で利用できる地域の新たなレンタルホールとして注目を集め、開店から1年半ほどで楽器や歌の発表会、子どもたちの交流会、プロのコンサート、セミナー、マルシェなどさまざまなイベントが開催されています。
「地域の人たちの『やってみたい!』を後押しすること。それによって、若者から高齢者とさまざまな年代の交流につながるだけでなく、子どもにとって大切な体験の場にもなっていると感じています」とオーナーの野中佐代子さんは目を細めます。
ただ、野中オーナーにとって現状は通過点。ムーミンティラを通じてもっともっと雲仙からワクワクを発信していきたい、と考えていらっしゃいます。そのために掲げた目標が『自主企画の充実』と『心のメンター事業』。そんなムーミンティラの今後の展望を詳しく伺っていきたいと思います。
野中さん:ひとつは、私が今、唯一ピアノを教えているシニア世代の生徒さん。4年ほど前からレッスンしているんですけど、小さい頃から習いたかったピアノを弾けるようになるのが本当に楽しくてしょうがないって感じなんですよ。年二回、開催しているコンサート(発表会)で演奏している姿はキラキラと輝いていて、やっぱりいくつになっても挑戦することは大事だなと感じました。
野中さん:あとはこれまでの自分自身の経験ですよね。20代から30年つづけたピアノ講師、障害児のためのボランティア活動、グループホームでの音楽療法…。長年、音楽に関わってきた人間として、子どもから大人まで幅広い年齢の人が生の演奏に五感でふれることができるような企画をやってみたい、と思うようになったんです。
野中さん:「ぶーけっ音」のテーマは“音楽と絵本”。いろんなお話を音楽の花束で届けたい、という想いでプロジェクトを企画しました。子どもから大人まで多くの人に楽しんでもらえるようなイベントをメンバー皆で意見を出し合いながら考えるのは本当にハッピーな時間。まだまだプロジェクトは始まったばかりですが、改めて「私ってワクワクすることが好きなんだなぁ」と感じましたね。
野中さん:おかげさまでホールは予約で満席。お客様がすごく楽しんでくださったので、私たちもワクワクしながら気持ちよく表現することができました。初企画が終わったばかりですが、お客様のたくさんの笑顔を見て、早く2回目、3回目をやりたいと気持ちがウズウズ(笑)。今後も「ぶーけっ音」をはじめ、自主企画を充実させてていきたいと思っていますので、応援していただけたら嬉しいです。
野中さん:ムーミンティラのカフェは、もともと「心が疲れている人がふらっと立ち寄って相談ができる」、地域のカウンセリングスペースとして想定していました。これは働きがいコーディネーターとして活動する中で、それぞれの世代が心に抱える悩みや不安にふれてきたから。オープンから1年半が経った今こそ、原点に立ち戻ってカウンセリングやコーチングに力を入れていきたいんです。
野中さん:やっぱり、ママが元気なかったり不安定だったりすると、子どもにも影響が出ちゃいますよね。ただ、人の繋がりが希薄になっている現代。相談できずに一人で抱え込んでしまうママってすごく多いんですよ。だからこそ、ゆったりとコーヒーを飲みながら自分の想いを吐露できる…。そんな場所になっていけたら、ムーミンティラを作った意味もあるのかなと思います。
野中さん:以前から「野中さんはカウンセリングやコーチングができるんだから、心のメンターをやった方がいいよ!」といろんな人に言われていたんですよ。ただ、「困っている人からお金を取るのはちょっとなぁ」と長いこと二の足を踏んでいました。でも、最近になって「やるからにはプロとして逃げ道を作らずに取り組まないと!」と覚悟が固まり、間もなくメンター事業を本格的に始動させるところです。
野中さん:ありがとうございます。一般的なカウンセリングのように1回●分と時間を決めて、カフェスペースでコーヒーを飲みながら不安や悩みを傾聴。必要に応じてコーチングを行うようなスタイルを考えています。お子様がいるママはもちろん、若者やご年配の方のご利用もOK。だれでも自由に垣根なく相談に来ることができる地域の居場所として展開していきたいと思っています。
子どものように目を輝かせながら、今後の展望をアツく語ってくださる野中オーナー。「実はもうひとつ考えていることがあって…」と話してくださったのが、“カフェスペースのレンタル”です。
「やっぱり、ワクワクすることって大事だと思うんですよ。今、カフェスペースの稼働は金曜と土曜の夜だけ。そこを『カフェをやってみたい!』という方に貸し出せば、その人のワクワクの後押しにもなりますし、ムーミンティラも地域のワクワクする場所としてもっと認知される。ワクワクが未来を変えると信じて、これからも頑張っていきたいですね」
笑顔で自分らしく生きる――。その言葉を胸に、野中さんが故郷・吾妻町にオープンしたムーミンティラ。フリースペースとしての歴史は始まったばかりですが、その行く先にはとても明るい光が差しているようでした。
取材・執筆/Komori Daigo
長崎県雲仙市吾妻町阿母名9-1 ( Google MAP )