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暮しを楽しむの手帖
旅館國崎#4 創業から半世紀を経た今、古き良き時代の名残を感じられるお宿として後世に残していきたい

1972年、小浜温泉の南側にある脇之谷通り沿い創業した「旅館國崎」。半世紀以上に渡り立ち寄り湯のある宿泊施設として営業してきた國崎を、代表である父・剛さんと一緒に切り盛りしているのが若女将の井上尚子さんです。

「小さい頃はお客様にはよくかわいがってもらいました。父が運転するマイクロバスに乗って知らないおばちゃんたちと一緒にお菓子を食べたり、合宿で来た外国人の方に仲良くしていただいたり…。普通の家庭と違うことに悩んだこともありましたが、今は生まれ育ったこの場所が大好きです」

島原半島を旅行する方々の参考になればと独自の観光スポットマップを制作し、國崎の公式サイトで紹介している尚子さん。記事の前半では尚子さんのおすすめスポット、後半は旅館國崎の今後の展望を伺っていきたいと思います。

“大人の隠れ宿”の若女将がオススメする小浜&島原半島の観光スポット

観光客が宿泊する旅館という性格上、お客様から「良い観光スポットない?」と尋ねられることも老いと思います。そんな時、尚子さんはどんな場所を紹介なさるのですか?

尚子さん:小浜エリアだと日本一長い流れる足湯「ほっとふっと105」ですね。海を見ながら足湯でほっと一息つけますし、夕暮れ時には太陽が橘湾に沈む幻想的な景色を眺めることができます。個人的にイチオシの楽しみ方は併設された蒸し釜を使うこと。先に近くのスーパーで購入した卵や野菜を蒸し釜で調理し、足湯に入りながら食べると最高に贅沢な気分を味わえますよ。

小浜温泉街には素敵なお店もたくさんありますよね。

尚子さん:個人的に大好きなのが国道沿いにある「ケーキとパンの店 Pack(パック)」。雲仙のジャガイモを生地に練り込んで焼き上げた“じゃが食パン”はモチモチで本当に美味しいんです。土・日・月だけ営業している路地裏のテイクアウトスコーン専門店「YOU&RICH」もおすすめ。最近はオシャレなカフェが増えてきているので、湯けむり立ち上る温泉街のカフェ巡りなんていかがでしょうか。

尚子さんは御朱印帳を持っているくらい神社がお好きとお聞きしました。島原半島にはたくさんのお社がありますが、推し神社があれば教えてください。

尚子さん:雲仙市瑞穂町の森の中にある「岩戸神社」ですね。苔むした石や木々に囲まれた参道、巨大な洞穴の前に佇む本殿、岩戸水神の水汲み場…。まるで神様の世界に足を踏み入れたような厳かな雰囲気にすごく惹かれますね。参拝のあとに「狸山まんじゅう」に寄るのが定番のドライブコース。夏はかき氷、冬はべた餅を食べるのが楽しみのひとつになっています。

子育て中のママでもある尚子さん。お子様連れのファミリーにピッタリな場所はありますか?

尚子さん:島原市の「がまだすドーム」かな。常設展示では家族で体験しながら楽しく火山のことを学べますし、体を動かせる屋内遊具スペースもあるので雨の日でも安心。今年(2025年)3月にリニューアルして、体験型のプロジェクションマッピングや大型のふわふわスライダーも増えているのでお子様連れならぜひ訪れてみてほしい施設ですね。

昔懐かしい雰囲気と快適な空間の両面を大切に。國崎を後世に残すのが私の使命

家業である旅館國崎の経営に携わってから、印象に残っている出来事はありますか?

尚子さん:お客様の“プロポーズ大作戦”です。私が國崎で働くようになってから2組くらいしかないんですけど、男性から事前に「サプライズで彼女にプロポーズをしたい」というお申し出があって。そもそも、人様のプロポーズに立ち会う機会なんてありませんから、当日は私を含め、みんなソワソワしていたことを覚えています。

大人の隠れ宿でプロポーズ…。お客様にとって一生忘れられない思い出になったでしょうね。

尚子さん:ご来館時、少し緊張気味の彼氏さんと何も知らずにはしゃいでいる彼女さんの姿を見て、「うまくいきますように…!」と祈るような気持ちで受付しました。サプライズなので応援するわけにもいかず、とにかく心がけたのはいつもと変わらない笑顔と接客。プロポーズが無事に成功した時は、嬉しくて涙を流しているスタッフもいるくらい感動しましたね。

それでは最後に、旅館國崎の今後の展望をお聞かせください。

尚子さん:一番の目標は「大人の隠れ家」として後世に残していきたいということ。新しく建築されたりモダンでおしゃれに改装されたりして全国的に綺麗なホテルや旅館が多くなっているからこそ、古き良き時代の名残を感じられるお宿としてブレずに続けていきたいと考えています。

確かに。古都にある旧家のような佇まいに魅力を感じているお客様も大勢いらっしゃると思います。

尚子さん:お客様からも「昭和にタイムスリップした感じ」「ジブリの世界に入り込んだみたい」と喜んでいただいています。ただ、たびたび改装しているとはいえ、本館の建物自体は7~80年くらい経っている古株物件。昔懐かしい雰囲気と快適な空間の両面を大切にしながら修繕を重ね、これからも多くのお客様に最高の宿泊体験を提供できるように努めて参ります。

「おたふくのように表情が柔らかくなったお客様をお見送りする時間が、私にとって一番うれしい時間です」とほほ笑む尚子さん。温泉街の路地裏を照らす優しい明かりは、お客様を笑顔でお迎えする尚子さんの心のよう。静かで落ち着いた雰囲気からは、和の情緒あふれる老舗宿の矜持を感じます。

2023年には雲仙岳の中腹にある温泉付遊休地を生かした新事業・グランピング施設「COCOHARE(ココハレ)」をスタートさせた國崎。昭和を感じる大人の隠れ宿と温泉も楽しめる最新のグランピングの両輪で、たくさんの方に素敵な宿泊体験を提供していくことでしょう。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
旅館國崎

長崎県雲仙市小浜町南本町10-8 ( Google MAP

営業時間:

チェックイン/15:00~ チェックアウト/~10:00

TEL: 0957-74-3500

URL:https://kunisaki.jp